コメント:十数年前、「ポーの一族」、「トーマの心臓」、「11人いる!」と、世で萩尾望都を一大マンガ家に仕立てあげた作品に、いくら読んでもピンと来なかった私が、唯一はまった作品が、この「スター・レッド」である。
他の作品と簡単に比較しても、この作品の主人公、セイほど激しい登場人物や、またストーリー展開で、これほど豊かな情緒の萩尾作品はないのではないかと思うほどである。
作品の位置付けとして、竹宮の「地球へ…」、松本の「宇宙戦艦ヤマト」などと、時代を同じくして発表される。未来都市、超能力者、異星人など、なぜかこの当時頻繁に書かれた作品の要素がふんだんに取り入れられている。そうした共通性、細かい設定、思いがけない展開など、最初から完璧に練られた作品なのかと思いきや、担当編集者に突然連載を申し渡され、慌ててタイトルを提出し、毎月の締め切りとのおいかけっこで作って書いた、という自転車操業であったということなのだ。それを知らされるにつけても、萩尾は実は自転車操業の方がいい作品が書けるのではないかと思ったほどである。
中でも、この作品で珍しいのは、SFであれば無味乾燥になりがちのラブストーリーが描かれ、それが一段と作品に華を添えている。恋しつづけてきたものが、目の前から失われる運命、抗えぬ運命、届かぬ想い――ここに筆舌に尽くすだけ、無駄なのではないかとさえ、思える。(C)少女マンガ名作選
もし、「ポーの一族」、「トーマの心臓」しか読んだことがない、といわれる方には、ぜひご一読をお勧めする。
ただ一言付け加えるなら、火星への移住は理論的には可能だそうである。しかし移住したとしても、「スター・レッド」のような火星人は生まれてこないだろう。が、少なくとも、これを読んで以降、私にはあの蛸のようなイメージの火星人が、至極無粋な存在としてしか映らなくなってしまった。