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狂気の罠に堕ちる
――校内に隠された「日記」によって暴かれる過去、そして、人間の真実――
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’80s 少女まんがコラム
Vol7. (2000.5.6発行)
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こんにちは。「’80s少女まんがコラム」第七回目の配信です。
第七回目の配信は、赤石路代さんの「アルペンローゼ」を取り上げてみました。
担当は、おなじみ、堀川成美です。
■ 作品 : アルペンローゼ
(1983−1986)
■ 作者 : 赤石路代
■ コミックス
「フラワーコミックス」(小学館・全9巻)
■ 登場人物:
ジュディ、ランディ、プランタン(鳥)、ラインハルト・アッシェンバッハ(
ジュディの幼馴染・天才音楽家)、ジュルジュ・ド・グールデン伯爵、ルノー・
デュポワ、フランソアーズ(グールデン伯爵夫人)、ハンス、クララ(ハンス妹)、
アンリ・ギザン将軍、ロバート、リーズル、ヨハン、ハインリヒ、エレーヌ、フレ
ードリヒ・ブレンデル、ジャン・ジャック、デュナン夫妻、 マチルダ・トロンシャ
ン
ジャン・ジャック、テオドール・シュトラッサー(ジャン・ジャック義父)、マ
ドゥレーヌ・トロンシャン、
■ あらすじ:
1939年、時代は第二次世界大戦を目前に控えていた。
スイスの高原に、叔父夫婦の世話になりながらランディは暮らしていた。ある夜、
幼馴染のジュディが店主に暴行されそうになり、家に逃げ帰ってくる。ジュディは
6年前、記憶喪失になってタンポポ畑に倒れていたのを、ランディがみつけ、自分
の家に連れ帰ったのだ。名前も覚えていない彼女にジュディ(木曜)という名前が
与えられた。だが、ランディの叔父夫婦には彼女を養う余裕はなく、街のレストラ
ンに働かされていたのだった。
雇い主の元に戻るのはいやだというジュディを、叔父夫婦はいやいや家に置くこ
とにする。ところが、森でグールデン伯爵がジュディの鳥プランタンを撃とうとし
て止めに入ったランディが、グールデン伯爵にムチで傷つられ、それにジュディが
抗議したため、ジュディはグールデン伯爵の居城に連れ去られてしまう。
ジュディはそこで永遠に働くことを命じられたが、ランディが助けにやってきた。
ランディは日ごろからグールデン伯爵を憎んでいた夫人に助けられ、ジュディと共
に無事脱出、グールデン伯爵の追及を逃れるために家にも帰れない二人は、ジュデ
ィの家族を探すたびに出る。
二人はアルペンローゼという言葉と、ジュディが六つの頃までドイツ語を話して
いたというのを手がかりに、首都ベルンへ出、アルペンローゼが花であることを発
見し、そこで出会ったハンスの友達の話から「アルペンローゼ」という歌があるこ
とを知る。しかし、アルペンローゼの歌をきくと、ジュディはなぜかひどくおびえ
てしまうのだ。
二人は「アルペンローゼ」という曲、そしてその作曲者のいるオーストリアのザ
ルツブルグに、ジュディが深い関わりがあったのではないかと推測する。
ハンスに一晩の宿を借りた二人だが、妹クララが熱を出し、病院に運ばれる。ク
ララの入院費を捻出するため、ハンスは、街中にはられたグールデン伯爵の二人を
探索するポスターに書かれた賞金に目をつけ、ジュディとランディのことを密告し
てしまう。
ジュディとランディは街中を逃げまわる。ところが、その日の昼間、クララが引
かれそうになりジュディがかばった、車の乗車主、ギザン将軍に助けられた。そこ
でギザン将軍は知り合いの娘にジュディがそっくりで、その人の娘かもしれないと
教えてくれる。その人はオーストリアに嫁いでいったというので、手がかりを探し
に二人は国境を超えることを決意、ギザン将軍に助けられ、グ―ルモン伯爵の追っ
手を逃れながら、国境越えに出発する。
汽車の中でであった人達に、アルペンローゼの歌に二番があること、また作詞者
に昔であったという人物と遭遇するのだが、汽車はドイツ軍の輸送列車を止めるた
めにゲリラがしかけた鉄橋の爆破に遭い、残された爆弾の除去に立ち向かったラン
ディが爆破に巻き込まれて行方不明になってしまう。
ジュディはランディの捜索を待っていたが、一日も早い両親の探索を周囲に進め
られ、連絡先を残してザルツブルグに旅立ち、「アルペンローゼ」の作曲者、レオ
ンハルト・アッシェンバッハの家を訪ねるのだが…。
■ コメント:
赤石路代を有名にした最初の作品が、この「アルペンローゼ」だろう。
特にアニメ化されたことでも有名になった。アニメ化された時のタイトルは「炎
のアルペンローゼ」、作品中にある「アルペンローゼ」の歌詞に曲がつけられ、テ
レビアニメ界初の交響曲が準備されたということで話題にもなった。が、残念なが
ら、私はこのアニメ版をよく覚えていない。
また、この人絵がいつうまくなるんだろう、と思ったが、どうやらこれが元々の
絵柄らしい、と気付いたのは、次の作品を見てからだった。
いかにも少女マンガな絵柄の中に、ドラマチックなストーリーを盛り込むのはこ
の当時の小学館系では珍しくなかったのかもしれない。これはショートヘアの女の
子をさして「これは男の子だよ」といわれても、「ふーん、そうか」と騙されてし
まうし、逆でもやはり同じ反応をしてしまう。絵柄はそんな感じだ。
設定はナチスドイツが専制してきた時代であるが、時代は時代でも、ヒトラーは
ただの一度も登場しない。舞台は、第二次世界大戦の、永世中立国を守り通すかど
うか、という時のスイスである。だから、直接ナチと関わるような状況も登場しな
い。戦時中独特の悲惨さもさほどない。ただ、ジュディという少女にまつわる、あ
くまでも人間的な原因に発して話が展開されている。
ただ、ジュディの幼馴染レオンの両親はナチに殺された。レオン自身も反ナチの
歌「アルペンローゼ」を作曲している。そしてジュディの父親も作詞をしてナチに
追われることになった。しかし、「アルペンローゼ」の歌詞、「わたしをとらえる
十字のかせを」は、ジュディにとってはナチのハーケンクロイツではなく、彼女自
身をそこへ誕生させた運命そのものなのだ。
記憶を呼び覚ますために、過去をたどるために作者によって作られた歌詞であり、
その歌詞を導くための時代設定であっても、この詞はあくまでもジュディという少
女の運命のために必要とされた歌詞なのだ。だから、特別な時代の特別なストーリ
ーのようであっても、ジュディにばかり与えられた運命とは、本当は言えないかも
しれない。
歌詞の主題になっているのも、「勇気を持って愛する人のために闘うこと」。主
人公たちの姿もまた然り。戦中のドラマチックストーリーに終始してはいないのだ。
そこがこの話の救いであり、このストーリーの魅力でもあり、楽しめる普遍性の
原因なのだろう。
二回目読み返すと、えー、そんなに偶然って重なるもんか?とか、ちょっと展開
が早過ぎない? と突っ込みを入れたくなるところも多々ある。ただし、初読の時
は、「ここで止めるなよ」という巻末の終わり方をしていて、おそらく連載と同時
に読んでいた読者は、中毒にかかったように次を待っていただろう。
六巻以降の第二部は最初から予定になかったそうで、編集部からの注文で作った
らしい。えええ? ランディにお兄さんがいたの? といかにもとってつけたよう
な設定だが、一応後で作った割には苦しいながらも説明がついている。おそらく題
材的には、幾らでも話を作れるネタなのかもしれない。ジュディが実はアンリー・
デュナンの血族だったことの設定も、二部で意味を持ち、生きた。何にせよ、読者
は一部のあれで終わっては、ちょっと物足りなかったろう。きっと中毒だったろう
し。
河惣益巳の「サラディナーサ」も編集部の注文だった。
「サラディナーサ」は多くの人に河惣益巳という人の作品に向ける目を変えさせ
た。
商業主義か、作品か。
作家を生かすも殺すも、時として、読者と編集部の手にかかっているのだと、改
めて気付かされる、そんな作品の一つでもある。
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編集後記
いかがでしたでしょうか? 「アルペンローゼ」。
後で読み返すとジェットコースターストーリーのような展開の早さを感じるんで
すが、最初に読んだ時は、結構ちょうど良かったように覚えています。
雑誌連載中の広告枠に、ガクッとくるようなイラストやコメントが書いてあるの
もこの人の特徴でした。
ところで、このメールマガジンですが、前日には配信手続きが完了して発信する
ようにセットしてありますが、実際はそう上手くいかないようです。今回の配信状
況を見て、次回からもう少し早くセットするかもしれませんが、早目に到着した人
は、どうか「もう来たの?」なぞと言わないで、よろしくお願いします。
また、「大人になってもマンガ好き」は、マンガのことしか取り扱っておりませ
んが、「空中回廊」の「堀川成美の世界」の「うーん、漫談」というコーナー、日
記形式の私めの漫談ですが、マンガ以外のネタも扱っております。くだらない話
(ばかりでもない)ですが、よかったらそちらの方ものぞいてみてください。
ではまた次回。
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発行&責任編集者:堀川成美
Vol.7執筆担当者:堀川成美
発行日:2000年5月6日
Copyright(C) 2000- All rights reserved.
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